このインド原産のヘナは、頭髪用としてだけでなく、工業用染料など、さまざまな用途・目的で世界中に輸出されている。
もちろん、国内での需要も大きい。インドでは、赤い髪は良くないとされ、忌み嫌われているために、黒髪か白髪の人しかいない。
日本だって、1945年昭和20年の敗戦を境に、欧米の文化が圧倒的な勢いで流入してくるまでは、有史以来、「黒髪文化」が脈々と息づいてきた
インドでは、今も黒髪文化黒髪崇拝が生きつづけている。だからこそ、赤やオレンジに染まるナチュラルヘナではなく、ブラックヘナが愛されているのだ。
今でも残るカースト階級制度のインドでは、身分の高い人たちは就寝前にココナツオイルかジンジャーオイルを頭髪につけて、朝それを洗い流して、ブラックヘナをつける。
「髪は命」というお国がらだから、階級の低い人々にも広く浸透している習慣だ。時間があってないような国だから、今日は「ヘナの日」と決めると、1日中、頭髪にヘナをつけたままにしておく人も多い。
インドには、ヒンドゥー教とイスラム教が混在して、大勢力として張り合っているが、ヒンドゥー教徒の人たちの間では、ヘナは吉祥の女神・ラクシュミーが好む植物として信じられてきた。
ラクシュミーはシヴァ神と並んで、ヒンドゥー教徒の熱心な崇拝の対象となっており、ヴィシュヌ神の妻で、幸運と美の女神。「家内安全・繁盛」を願って、インドの女性たちはラクシュミーの女神を熱心に祀ってきた。だから、インドの女性は今も、眉の間にヘナで模様を描くし、結婚式やお祭りには、手足にヘナで模様を描くのだ。
(ヘナタトゥ)熟練次第でだれにでもヘナタトゥはできるが、インドでは町に専門の職人がいる。とくにインド北部のパンジャブ地方や、西部のムンバイの職人(メンディワリ)が一番腕がいいと認められているようだメンディワリは世襲が多く、6、7歳から修行をはじめ、腕のいいメンディワリは結婚式に呼ばれ、花嫁だけでなく、列席者にもヘナタトゥを施すそうだ。
ついでに補足すると、日本でもこ>2、3年、このヘナタトゥ(ヘナアート)は若い女性の間で確実にブームになっている。東京の青山や銀座には専門のショップがあるし、新宿の老舗デパート・伊勢丹にも夏季だけ専門のコーナーが登場する
多くの場合、美術大学の学生がアルバイトでヘナアートをこなす。ノースリブになる夏の間は、上腕部に描くヘナアートは2週間で消えてしまうという理由もあってか、手軽に楽しむ若い女性が多い。1日に沢山のお客様をこなしているようだ。
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